第13章 働く六つ子(バイト編)
一松side
おそ松兄さんに渡されたエロ本を見て慌てるカラ松。
俺はそれを見て自慰するカラ松を想像してたまらなく嫌だった。
そのエロ本はいたって普通のエロ本。
という事は女の子をおかずにって事になる。
自慰されるってだけでも悲しいのにそんなの耐えられなかった。
気が付いたら俺は部屋を飛び出していた。
俺は行く当てもなく、もうすっかり見慣れた屋上に行く。
そこに来て上着をカラ松に投げつけてきたことに気が付いた。
「寒・・・」
ベンチの上で縮こまる。
「静寂と孤独を愛するんだもんな・・・だったらやっぱり一人で処理してる方が」
「それは違うぞ一松?」
ふわりと背中を何かが覆った。
カラ松の所に置いて来たはずの上着だった。
俺は声の主を見上げて思わず立ち上がる。
「馬鹿ッ!お前何でそんな体で追いかけてくるんだよ!」
「お前の居ない時間にはもう耐えられないからさ。静寂と孤独を愛していたのは過去の事だ。今、俺が愛しているのはお前と居る時間だけだぜ?一松」
そう言って俺の横に腰かけるカラ松。
「あ~あ、二百円負けた」
「二百円?何のことだ?」
「何でもない」
そんな事より言いたい事があった。
寒いから戻ろうと言うカラ松の袖を掴んだ。
「ねぇ、自分で処理するとかやめてよ・・・カラ松には俺が、居る・・・でしょ?」
恥ずかしくて俯いた。
カラ松がどんな顔してるかは見えないけど何も言わない。
そんなの無理だって言われちゃうかなと思った。
だけど、カラ松は俺を抱きしめて俺の肩に顔を埋めて言った。
「い、一松・・・そんな可愛い事言うのは止めてくれないか?俺だって我慢してるんだぞ?」
「嘘つけっ!エロ本の女の子見て抜く気の癖に!」
するとカラ松は俺の肩を掴んで反論した。
「俺はそんな気は一切ない!」
「でも、エロ本見て慌ててただろ!いつもやってるから俺に見られたら気まずいと思ったんだろ!」
「違う!!確かに慌てたが、あれはお前がこうやって勘違いして落ち込んでしまうと思ったからだ!」
俺は一気に顔が赤くなるのを感じた。
俺の早とちりだったのだ。
悲しいのと嫉妬と一晩共に居られなかった寂しさが俺を焦らせたんだろう。
カラ松は困った顔をして微笑むと俺の頭を撫でた。
俺は耐えられなくなってその手を払いのけて立ち上がり、カラ松を置いてスタスタと歩きだした。