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【おそ松さん】色松恋物語(BL長編)

第13章 働く六つ子(バイト編)



「弟は無理せずに兄ちゃんに甘えてりゃいいんだよ。行きたいだろ?カラ松のお見舞い」

ラーメンを拾う手を止めて、俺はいつもカラ松が座る真正面の席を見つめた。
しばらく沈黙が続くとため息をついておそ松兄さんが俺の隣に座り込む。

「今日はチョロ松はレイカのライブ、十四松は野球、トド松は夜中のバイトのために夕方寝たいからって十四松とでかけたし、父さんは仕事、母さんは用事があるとかで出かけたんだよ。カラ松の見舞い、今日は誰も行ってないんだぜ?可哀そうだろ?」
「でも、あいつ静寂と孤独を愛するんだよ?・・・ヒヒ」
「それにいくらかけれる?」
「200円」
「そんなに!?よっし、じゃぁ俺はそうじゃない方に250円!」

俺はよし乗ったと再び飛び散ったラーメンを片付けてチャーハンをかきこむと病院に行く支度をした。

「おそ松兄さん、路地裏によってもいい?」

靴を履くおそ松兄さんに声をかけた。
おそ松兄さんは靴のつま先でトントンと地面をたたきながらいーよと言ってくれた。
おそ松兄さんと路地裏に行くのは初めてだなと少し緊張した四匹の猫が昼寝をしていた。
気遣ってかおそ松兄さんは俺から少し距離を取って後ろを静かについてくる。
俺の気配に気が付いたのか一匹が片目を開けて俺の姿を確認するとにゃーとひと泣きした。
その鳴き声に他の三匹も欠伸や背伸びをして俺の所に集まってくる。
俺は一匹一匹撫でてから猫缶を並べてその場に座り込んだ。
おそ松兄さんも俺の横に静かに座り込む。

「ほんと、すっかり懐いてんね~」
「そう?」
「うん。一松、こいつら全員見分けつくの?」
「全員・・・二十匹くらいいるけど、見分けつくよ」

そんな他愛もない会話をしていると猫缶は空になっていて、猫達はじゃれ出した。
俺は立ち上がってカラになった猫缶をゴミ箱に放り込んで一番近くにいた猫の喉を撫でて「またね」と一言、振り返る。
おそ松兄さんは察していたのか既に立ち上がって出口の方に一歩踏み出しかけていた。
俺が同じく踏み出すのを確認してニカッと笑って歩き出す。


いつも兄弟に馬鹿だゲスだと罵られているけど、猫を驚かせない様に終始静かに話し、ゆっくり動作するおそ松兄さんが意外で驚いた。
おそ松兄さんはおそ松兄さんなりに俺達に気遣っている時もあるのかもしれないと長男の知られざる一面を思った。

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