第13章 働く六つ子(バイト編)
次に目が覚めた時には昼をまわっていた。
部屋を見渡すと、寝ていたはずの長い布団は片づけられて、俺はソファーの上に寝かされていた。
起こしても起きないので誰かが俺を移動させたらしい。
窓から差し込む太陽の光で部屋はぽかぽかと暖かかった。
俺は寝間着からパーカーとジャージに着替えて居間に向かった。
そこにはおそ松兄さんが一人、横になってテレビを見ていた。
「あ、一松ぅ~、お前何時まで寝てんの?皆昼飯食って出かけちゃったよ~?」
「うん、昨日の夜なかなか寝れなくて」
そこで俺の腹が鳴る。
それを聞いて笑いながらおそ松兄さんが台所を指さした。
「チョロ松がお前の分にって」
台所を覗くとテーブルの上にラップのかかった皿があった。
チャーハンが盛られていて、その横にチョロ松兄さんの字で置手紙がしてある。
『棚の中にカップ麺あるから一緒に食べて』と書かれてあった。
台所に備え付けてある戸棚を開けるとカップ麺がいくつか入っている。
俺は適当に一つ取り出し、お湯を入れてチャーハンをレンジにかけた。
その間にスプーンと箸とお茶とカップ麺を居間に運ぶ。
そうしている間にレンジがチーンと温め終わったことを告げた。
家電の音と自分の立てる音以外音はない。
いつも俺の周りをついてくる愛しい人の声はない。
寂しいと感じていることに妙に恥ずかしさを覚えて、俺は強めにレンジの扉を閉めた。
居間では相変わらずおそ松兄さんがドラマを見ている。
その横でズルズルとラーメンをすすっていると、不意におそ松兄さんが起き上がった。
俺はまだ長くカップの中に伸びる麺を咥えたまま視線を向けた。
「一松・・・」
「んーん?(なーに?)」
おそ松兄さんはじーっと俺の瞳を覗き込んできた。
俺はじっとしていられなくて麺をすすりちゅるんと口の中に収めた。
「カラ松の事意識しすぎ」
「ぶはっ!!・・・げっほげっほ!」
俺は思わずラーメンをぶちまけた。
何してんの~とあきれ顔のおそ松兄さんを睨みつけながら飛び散ったラーメンを片付ける。
「何なの急に?べ、別に俺クソ松の事なんて考えてないし?」
「またまた~、居間に入ってくる度にいつもカラ松が居る場所見てため息ついてるのに?」
「はぁ!?そんなっ、き、気のせいだr」
慌てて反論しようとしたらおそ松兄さんが俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。