第2章 想い
トド松side
一松兄さん、少し元気になった?
カラ松兄さんを殴り飛ばしたあたりから一松兄さんがいつもの調子になったような気がした。
少し安心した。
二人が出かけた後、おそ松兄さんが今朝の様に輪になるよう言ってきた。
僕達は何だろうと思いつつ集まる。
「一松の事だけどさ・・・」
「カラ松と話し合ってきたんだろ?」
おそ松兄さんはチョロ松兄さんを見遣ってうんと頷いた後、ぐるっと僕達を見て言った。
「カラ松には一松をおとせって言ってきた」
「「「え?」」」
僕と十四松兄さんとチョロ松兄さんの声がハモる。
そしてわなわなと体を震わせていたチョロ松兄さんがおそ松兄さんの胸倉に掴みかかった。
「本当に何でお前そんななの!?いざという時はやってくれる人だと思ってたけど買いかぶりだったよ!何がどうしたらそんな話になるのさ!!」
チョロ松兄さんはぜーはーと息を切らせて、でも胸倉を掴む手はまだぎりぎりと力が入っている。
おそ松兄さんはまあまあと両手を上げる。
「ちゃんと俺の話最後まで聞いてくれる?」
「何を聞くっていうの!そこから何が得られるっていうの!?」
興奮しているチョロ松兄さんを僕が止めに入った。
「チョロ松兄さん、落ち着いてよ!僕、おそ松兄さんが言いたいことなんとなくわかる気がするから・・・ちゃんと話聞いてあげようよ!」
チョロ松兄さんは少し驚いたように僕を見て、ごめんと言いながら座りなおした。
「トド松は何か知ってるの?」
そう、僕は知っている。
気づいている。
カラ松兄さんが一松兄さんを好きなこと。
小さい頃僕とカラ松兄さんはいつも一緒だった。
だからかな、カラ松兄さんが一松兄さんを好きになってから少し寂しい思いをした。
僕に向けるものとは違う愛情を一松兄さんに注ぐカラ松兄さんに僕は気づいた。
なのに、その愛情を無碍にする一松兄さんが許せない時期もあった。
そんなことを思い出しながら僕は皆の顔を見る。
僕は今酷い顔をしているんだろうな、十四松兄さんもチョロ松兄さんも心配そうに僕の顔を覗き込んでいる。
「カラ松兄さんはね、ずっと・・・ずっと、一松兄さんを想ってるんだよ」
一瞬、時が止まったようだった。