第13章 働く六つ子(バイト編)
一松side
時間が気になって一睡もできずに午前三時を迎える。
十一月のこの時間は流石に布団から出るのもしんどい。
俺は布団から出ると身震いしながら十四松を起こす。
そして二人でこっそり着替えると家を出た。
向かうのはカラ松がバイトをしていた新聞社。
軽く説明を受けて山のような新聞を受け取ると俺は新聞社を後にした。
近くで待っていた十四松が駆け寄ってくる。
「一松兄さん、持ちまっせ!」
「うん」
働かなくちゃと思った時に真っ先に思い付いたのがこの仕事で、この仕事以外考えられなかった。
接客でないなら自分にもできるかもしれないと思った。
だけど、心配なのはかなり早起きしなくてはならないことと体力的な面だ。
そこで昨日、何かやれることはないかと言う十四松に体力面のフォローをお願いしておいた。
新聞をここまで運ぶのも俺は一苦労だったので十四松に心から感謝した。
後半ドタバタしてしまったけど何とか配り終え、フラフラになった俺は十四松に負ぶられて家に帰りついた。
二階に上がるともちろんまだ皆寝ている。
俺達は再び寝間着に着替えると布団にもぐりこんだ。
自分の左側に目をやる。
そこにはもちろんカラ松の姿はない。
だから、冷えた体を温めてくれる人もいない。
すやすやと寝息を立てるトド松に背を向けて静かに溜息を吐いた。
「カラ松・・・」
思わず漏れた愛する人の名前。
俺は十四松に聞かれてしまったかもしれないと慌てたが、いつの間にか鳴り響いているいびきが十四松の物だと気づいて安心した。
そして、慣れないことをした疲れと寝不足から俺も間もなく眠りについた。