第13章 働く六つ子(バイト編)
チョロ松side
ここにいる事を後悔するような内容だった。
一松は何度か嗚咽を漏らしながらも話し終え大きく溜息を吐いた。
労うつもりで肩を叩く。
おそ松兄さんも立ち上がって一松の頭をくしゃくしゃと撫でると立ち上がった警察の二人を玄関まで見送りに行った。
僕もその後を追う。
「一松はゆっくりしてなよ」
「うん」
玄関先で見送った後、おそ松兄さんが口を開く。
「お前が支えてやれよ?」
「へ?」
おそ松兄さんは警察の背中を眺めながら僕の頭に手をのせて言った。
「一松の悩みを聞いてやれるのはお前だけなのわかってんだろ?」
「うん、任せてよ」
僕と一松だけの秘密だと思っていた。
兄弟の間に挟まれた僕達だからこそ抱える悩みを分かち合うことから始まった僕と一松の何でも相談しあえる関係。
おそ松兄さんは気づいていたんだな・・・
奇跡の馬鹿と言われるほど馬鹿でどうしようもない兄さんだけど、でも兄弟の中で長男を務められるのはこの人だけしかいないだろうと改めて思った。
そして、何もできないのだと落ち込んでいた気持ちも持ち直した。
僕にしか一松にしてあげられないことがある。
そのことに気づかせてくれたおそ松兄さんの背中を見送って、玄関先で冷たくなった風を少しの間浴びていた。