第13章 働く六つ子(バイト編)
「ごめーん、ぶつけたぁ!いってー!」とおそ松兄さんが台所に向かって叫んで声のトーンを下げて続けた。
「ねぇ、そんな話?事件に関係あんの?余計なお世話なんだよ。弟の傷がえぐられるのを黙ってみてられるほど優しくないからね?俺が笑ってるうちに脱線した話元に戻してよ?」
そう言って笑うおそ松兄さんの目は笑っていなかった。
年配の刑事はバツが悪そうに話を進めた。
写真を撮られた覚えはあるかとか高木の部屋の望遠鏡から覗き見られていたこと。
他にも小さな袋に入った赤い錠剤を見せられて、飲まされた媚薬はこれで間違いないかとか、同じく袋に入った下着を見せられて一松兄さんので間違いないかとか。
なんだかここに居てこの話を聞いててもいいのかと、一松兄さんの気持ちを思うと席を立ちたくなったけどそれはそれで目をそらして見捨てるのと同じな気がして、結局最後までその場に座って、吐き気をこらえる一松兄さんの背中を撫でてあげる事しかできなかった。