第13章 働く六つ子(バイト編)
まず刑事さんが今わかっている状況を説明する。
「高木容疑者と知り合ったのは商店街の運動会の練習で間違いないですか?」
「はい」
「高木容疑者はその時点であなたに興味を持っていたと供述しています。心当たりは?」
「今思えば・・・騎馬戦であの人が土台だったんだけど、やたらあの人の腕が俺のお尻・・・ぐりぐり押し上げきてたな、とは・・・思う」
思い出して気持ち悪くなったのか言葉に詰まる一松。
その背をトド松が優しくさすっていた。
「うん、容疑者の供述通りですね」
「ああ、そうだな・・・では、昨日の事を順を追ってご説明願います。ええと・・・これはできればご兄弟全員のお話が聞きたいです」
そう言われて一松から順に話し始めた。
「朝、弟の十四松が血まみれの友達・・・猫なんだけど、見つけて、その子をカラ松と俺とトド松で動物病院に連れて行って、その帰り高木さんと遭遇しました。だけどトド松が気分悪くなって直ぐに別れました。家に帰って少し寝て、路地裏の猫に餌をやりに出かけて、その路地裏でナイフを見せられて、脅されて部屋に連れていかれた」
それを聞いて、一松がどんなに怖い思いをしたかと胸が締め付けられた。
「いったんそこまでにしましょう、では猫を発見した十四松さんは?」
「はいはい!僕です!」
十四松、トド松、僕と話を済ませる。
そして二階から連れてこられたおそ松兄さんが高木の部屋に駆け付けるところまでの経緯を説明した。
「なるほど・・・では、一松さん、思い出すのはつらいと思いますが部屋に連れていかれた後の話を聞かせてください」
一松は何を思っているのか・・・そのポーカーフェイスからは何もうかがい知ることはできない。
「部屋に着いて、高木さんの口から自分が猫を刺したって聞かされてカッとなって掴みかかったけど高木さんが猫の事がどうしようもなくどうしようもなくってどうしようもなくって言葉を連呼しだして、この人ヤバイと思って逃げようとしたけどパーカー掴んで投げ飛ばされて・・・リビングに逃げ込むしかなかった。気が付いたらベットの上に横にさせられて、手錠掛けられてた。多分、ここ」
一松は自分の左頬骨を指さす。
そこには痛々しい痣ができていた。
「殴られて気を失ってる間に・・・」
「それから?」
「それから・・・」
そこからは耳を塞ぎたくなる話ばかりだった。