第13章 働く六つ子(バイト編)
「僕もトド松やチョロ松兄さんみたいに一松兄さんの力になりたいと思って仕事を探したんだけど・・・ダメだった。ごめんね、一松兄さん」
そう言うとしょんぼりとした顔をする十四松。
正直、こいつのこんな顔は見たくないし、こんな顔させたのは自分なのだろうかと思うと自分に腹が立った。
何とかして、いつもの笑顔に戻してやりたいと思って言葉を紡ぐ。
「ありがとう十四松・・・すごくうれしいよ」
そんな言葉だけで十四松はにっこりと笑ってくれた。
俺の言葉が他人の悲しい顔を笑顔にできるのかと少しうれしくなる。
「一松兄さん、僕にも何かできることはある?」
「あるよ」
その言葉に十四松は更に笑顔満開になる。
「なになに!?」
ずいずいと迫ってくる十四松に体勢を崩して上体が後ろに倒れた。
そんなの気にしていない様子で俺の立てた両膝に乗って、嬉々とした笑顔を俺に向ける。
それはまるで尻尾をブンブンと振る犬の様だ。
そんな十四松に俺は言った。
「俺の手伝いしてよ?」