第13章 働く六つ子(バイト編)
「何?おそ松兄さんも何か知ってるの!?」
「そんなんじゃチョロ松、彼女できないよ~?」
「お前に言われたくねぇよ!!ってかこの話と彼女は関係ないだろ!?」
「う~ん、関係するかも?」
と、下唇に立てた人差し指を当てて澄んだ瞳で僕を見つめてくるトド松に腹が立った。
「で、何なの!?」
「一松兄さんの事よく観察してみてよ」
僕と十四松は眠る一松を起こさないようそっと近づいてじっと観察した。
だけど、何も変わったところは見当たらない。
「ねぇ、それって見てわかることなの!?」
「あっ!!僕分かっちゃった!」
両手を上げて飛び跳ねる十四松の口をトド松が慌てて塞ぐ。
十四松の声に一松は眉を寄せて小さく唸って寝返りを打った。
安眠を邪魔された時の一松はとても恐ろしい。
僕達はバクバクと心臓を鳴らしながら一松を見守った。
幸い、一松は起きることなく再び寝息を立て始める。
それに四人でため息をついた。
「ご、ごめんなさい」
謝る十四松に気をつけろよとおそ松兄さんが釘を刺す。
「でも、流石兄弟の中で唯一彼女できたことあるだけあるね、十四松兄さん!」
「ホントホント~、どっかのチョロシコスキーとは大違い!」
「チョロシコスキーって言うな!!」
「「「しーーーーーーーー!!!!!」」」
すると再び小さく唸って一松が寝返りを打った。ドキリとして振り向く。
その時だった。
一松の首に何やらきらめくものが這っているのが見えた。
「え?」
僕は一松の襟元をそっと捲る。
「うっそ・・・」
そこにはキーホルダーとよく似た猫のリングがあった。
首を這っていたのはリングを首にかけるためのチェーンだった。
「これ、もしかして旅行で?」
「そうだと思うよ?帰ってきたときには付けてたから」
「まじかよ!?」
「一松兄さんお嫁さんになるのかなぁ~?あは~」
「ちなみにカラ松もつけてるよ?」
おそ松兄さんとトド松にこんな事にも気づけないんじゃ女の子に愛想つかされるぞとダメだしされながら僕は一松の首元を見て唖然としていた。