第13章 働く六つ子(バイト編)
見下ろされたおそ松兄さんは変な汗をタラタラと流している。
こんなになるくらいなら、まだ不機嫌な顔をされていた方がよかったかもしれないなと少し同情する。
おそ松兄さんはニタニタと見降ろされる時間が耐え切れなかったのか次の言葉を催促する。
「な、何?」
「おそ松兄さんよりカラ松の方がよっぽど働けると思うよ?」
そう言って一松はソファーにボフッと倒れこむと直ぐに寝息を立てて寝始めた。
僕たちは顔を見合わせる。
今の言葉はどういう意味だろうか・・・
恋人の方が優れていると思いたい気持ちの表れ?
そうも思ったが一松がそんなデレな部分をわざわざ僕達に見せつけたりするだろうかと先の考えに疑問が浮かんだ。
だけど、そんなこと考えている場合でもないよなと僕も財布を持って立ち上がった。
「トド松、僕も行くy・・・あ」
「どうしたのチョロ松兄さん?」
僕は財布にぶら下がる猫を見つめた。
皆の視線が僕の視線の先に集中する。
その猫は、カラ松と一松が二人で旅行した時に買ってきてくれたお守り。
トド松は察したようで小さく呟く。
「もしかして・・・」
「カラ松兄さん、働いてた?」
「カラ松兄さん働いてたの!?すっげー!」
「いや、十四松、そうと決まったわけじゃないから!いやいやいや、あのノープランのあいつに限ってそれは無いって!」
確かにと僕が頷く横にトド松が座り込む。
僕も上げた腰をその場におろした。
身を寄せ合ってこそこそと議論が始まる。
「お土産のお菓子ってだいたい千円前後だよ?それが僕達と母さん達ので四箱、地酒はスマホで調べたんだけど一万円くらいだったんだよね」
「えええええ!?あの酒そんなに高い酒だったの!?」
おそ松兄さんが畳に付きそうな位顎を落とした。
それを気にせずトド松は続ける。
「キーホルダーが一つ七百円として、昼食は食べ歩きしたって言ってたから多く見積もって二人で一万五千円・・・」
トド松が指を折っていく横で僕は頭の中で計算していく。
「約三万三千円・・・」
「・・・やっぱり兄さん達は気づいてなかったんだね?」
トド松がにたりと笑う。
僕は何のことだとトド松を見やった。
僕達に内緒で何か買っていたのだろうか?
十四松も僕の横で顎に手を当て首をかしげている。
その横で、おそ松兄さんは両手を後頭部で組んでニターっと笑う。