第13章 働く六つ子(バイト編)
チョロ松side
エスパーニャンコの退院まで一週間を切っている。
一松はもちろん僕達六つ子全員の財布を合わせてもエスパーニャンコの治療費や入院費を払うことは到底不可能だ。
一松は自分で何とかするからいいと言って仕事を探すためなのか猫に餌を上げるためなのか出て行ってしまった。
そこに玄関からリリリンと電話の音がした。
「僕が行くよ」とトド松が腰を上げる。
しばらくして戻ってきたトド松はスマホや財布を持って再び襖に手をかけた。
「トド松、どこ行くの?一松の友達の治療費を工面する話し合いは?」
「お前もしかして見捨てるの!?流石ドライモンスター!」
茶化すおそ松兄さんを僕は軽く小突く。
するとトド松はドヤ顔で振り向いて言った。
「兄弟の中で唯一まともに働けるのは僕だけでしょ?」
「・・・トド松」
僕は兄思いなトド松に少し心打たれて目が潤んだ。
「実は、今の電話カラ松兄さんからだったんだ」
「カラ松?」
おそ松兄さんが横になっていた上体を勢いづけて起こして組んだ胡坐に手を突いて聞き返した。
僕も不思議に思ってトド松に視線を向ける。
十四松は何を思っているのかよくわからないが僕たちの顔とトド松の顔を交互に見ていた。
「一松兄さんの友達の治療費と入院費、本当はカラ松兄さんが働いて稼ぐつもりだったらしいんだけどこの様で無理そうだから代わりに働いてくれないかって」
「カラ松が働く?無理無理無理無理!!」
そう言っておそ松兄さんは自分の太ももをべちべちと叩いて笑っていると、トド松が開けかけていた襖がバシッと全開になった。
「一松!?・・・は、早かったね?」
少し不機嫌そうなその顔に僕たち全員が顔を引きつらせる。
今の話を聞いていてカラ松が馬鹿にされたことに腹を立てているのだと思った。
一松はじっとおそ松兄さんを見据えた。
おそ松兄さんは顔をひきつらせたまま言う。
「なぁに、一松?そんな怖い顔で睨みつけられちゃったら、お兄ちゃん泣いちゃうよ?」
すると一松はニタッと笑って言った。
「ああ、ごめん怒ってるとかじゃないから・・・ただ少し疲れただけ」
「疲れたって、お前・・・つい15分前に出て行ったばっかじゃん!?」
「そんな事よりさ、おそ松兄さん・・・」
一松はそう言いながら部屋に入ってきておそ松兄さんの傍に立ち、見下ろした。