第10章 歪み(モブサイコ編)
おそ松side
救急車の中で一松も手首の手当てを受けていた。
一松は手首を脱脂綿や包帯が這うたびにピクピクと小さく反応していた。
初めは痛みからだろうと思っていたがなんか様子が変だ。
「一松?どっか悪いの?」
「うん・・・でも、もう大丈夫」
そう言って一松は切ない表情でカラ松を見つめていた。
カラ松のこんな姿は初めて見た。
喧嘩でこてんぱんにやられるなんてことはなかったし、屋根から落ちても平気な顔してるし、俺達に何投げつけられたって、バズーカで撃たれたって元気だったのに・・・
流石に冗談言って場を和ませるって感じでもなかった。
「一松、カラ松は大丈夫だよ、お前を置いて居なくなったりなんてこいつは絶対にしない」
「・・・俺がカラ松をこんなにしたんだ・・・」
「え?」
病院に到着するまで一松は膝の上で拳をぎゅっと握って俯いたままだった。
手術室に運び込まれたカラ松を見送った後、二人きりになったところで俺はどういうことなのか尋ねた。
「刺されたカラ松とセックスした」
「・・・は?」
俺は返す言葉がなかった。
一松は「引くでしょ?」と自分を嘲笑するように鼻で笑う。
「でも、何か理由があったんだろ?」
「理由なんてないよ、僕が求めただけ。止められなかった・・・何度イってもっ!カラ松のお腹から俺の動きに合わせて血が噴き出るの見てもイクまで止められなかった!!俺が・・・俺が・・・」
「一松兄さんの所為じゃないよ?」
俺達二人だけの空間に一松を兄さんと呼ぶ声が聞こえた。
見回すけど誰もいない。
「おそ松兄さん、ここだよ!」
声のした方に目を凝らすと一松の居場所を教えに来てくれた小さい十四松が俺たちの足元に居た。
十四松は俺の膝の上に飛び乗ると話し始めた。
「一松兄さんは何も悪くないよ!悪いのは薬を飲ませた高木さんだよ!」
「薬?一松、お前何か飲まされたの!?」
一松は俺から目をそらしてしまう。
俺は十四松から話を聞こうと思い、視線を戻した。
「一松兄さんは媚薬を飲まされたんだ・・・だから、歯止めがきかなかったんでしょう?」
「でも・・・でもっ!・・・俺はちゃんと頭で理解してた、カラ松が刺されてることも動いたら出血が増すことも!それでも俺は・・・カラ松の優しさに甘えてカラ松に跨った・・・」