第10章 歪み(モブサイコ編)
媚薬の所為か気持ち悪いと思っているのに体はびくりと反応する自分に虫唾が走った。
「この白くて柔らかい足を切り落として冷凍保存しよう!そうすれば一松君のお兄さんに触られることはなくなって永遠に俺のモノだよね?クハハハハハハハハハハハハハハ!!」
俺はきつく目をつむり、肩で息を吐きながら襲い来る熱と恐怖に耐えるしかなかった。
高木さんはそんなことはお構いなしにナイフを取り出して俺の太ももをぺちぺちとナイフで叩く。
「ひっ!」
恐怖からか感じているのか頭の中はグチャグチャでそんなの理解できないけど体がびくびくと反応する。
それを高木さんは楽しんでいるようだった。
その時間は異様に長く感じた。
ペチペチという音と時計の秒針の音が妙に大きく聞こえた。
ガチャリ・・・
と、それを遮る音が部屋に響く。
高木さんも驚いたように振り返った。
音は玄関からした様に思う。
「おかしいなぁ、鍵は閉めたんだけど・・・」
にたりと笑う高木さんの視線の先。
スモークのかかった大きなガラスの付いたドアの向こう。
から足音がする。
そしてその足音は扉の前で止まった。
ガラスに浮かび上がるシルエット。
そこに人が立っている。
スモークで顔は見えないけど、愛しい人の色。
「カラ・・・松・・・」
俺の太ももに当てられたナイフ。
そこから高木さんの手に力が入ったのが伝わってきて俺はハッとする。
「カラ松っ!来るな!!」
高木さんはゆらりと立ち上がった。
同時に扉が開く。
俺の目から涙が溢れた。
嬉しいのと安堵感とそれから・・・
カラ松が殺されてしまうかもしれない恐怖からの涙だった。
カラ松は俺の姿を見てその瞳に鋭い光を宿す。
「お前、一松に何をした!」
「何って、初体験をさせてあげているのさ」
「何だとっ!?」
カラ松が高木さんにつかみかかろうとするのを見て声を張り上げた。
「カラ松っ!そいつはナイフを持ってるんだぞ!お前を殺す気だ!」
カラ松はその瞬間のけ反った。
高木さんの振るったナイフがカラ松の頬をかすめた。
カラ松は舌打ちをして後ずさる。
「一松君、見ていてね?僕の夢がかなう瞬間だ・・・」
「・・・はぁっはぁ」
「一松!?」
視界がチカチカとしだして体の熱も感じたことのない程の物になっていた。
そんな俺に気を取られたカラ松の瞳が揺れた。