第10章 歪み(モブサイコ編)
先日カラ松と行った旅行で下着が一枚消えたことを思い出す。
「旅館まで一緒だったのかよ・・・」
「君の傍にはいつもお兄さんがいたから近づけなくて残念だったよ。一日目に一人で歩いているところを見かけたけどすぐにお兄さんが来てしまったしね・・・」
じゃあ、あの時感じた視線は高木さんの視線だったのか。
だとしたら、あの時カラ松が俺の身を案じて急いで戻ってきてくれていなかったら・・・そう考えると背筋が凍った。
しかし、今置かれている状況はそれ以上にまずい状況なのかもしれない。
体の熱は徐々に上がり続け、ついに頬が赤らんでそれが高木さんにもばれてしまったらしい。
ニタニタと俺の頬に触れてくる。
俺はそれを避けるように顔を背ける。
「そろそろ頃合いみたいだね?何からしてあげようか?とりあえずこの服邪魔だよね?」
にっこりと微笑みを貼り付けてハサミをジャキジャキと鳴らして俺の服の裾を掴む。
俺は身をよじり必死で抵抗した。
手錠から手が抜けないものかとぐいぐいと手に力を籠めたけど手は抜けそうになかった。
だけど、暴れた俺にバランスを崩して高木さんの体がベッドの下に転げ落ちた。
俺はすかさず立ち上がり、出口に向かって走る。
しかし、またもやパーカーを掴まれそれを阻止され、ベットの上に引き戻された。
「げほっげほっかはっ!」
「何で逃げようとするんだい?僕はこんなに君を思っているのに・・・それを今から教えてあげると言っているのに君がこんなんじゃ教えてあげられない。僕はどうしたらいい?」
「知るかよっ!!」
心臓がバクバクとなる。
そして思い出すのはカラ松の事ばかりだった。
ここには来ないでと思っているけど心がカラ松を求めていた。
いつの間にかカラ松は俺にとって安心させてくれる存在で、大切で愛しくて・・・
「カラ松・・・カラ松・・・助けてよ」
その瞬間ゴッと物凄い音がして音の方を見やった。
高木さんの右手が壁にメリ込んでいた。
俯いてハハハハと笑いながら腕を壁から引き抜く高木さん。
粉々になった壁がパラパラと音を立てて床やベッドに落ちた。
「君の言うことを聞かない足と余計な事を言う口は切ってしまおう!そうすれば勝手に歩いたり俺以外の名を読んだりすることもなくなるよね?」
そう言って高木さんは俺のジャージを脱がして露わになった足にねっとりと手を這わせた。