第10章 歪み(モブサイコ編)
気が付くとベットの上に居た。
両手首には手錠が掛けられていた。
頬に感じる痛みから殴られて脳震盪でも起こしている間にこうなった事を悟る。
「気分はどう?」
声のする方を見ると窓際に置かれた黒い椅子に高木が腰を掛け、望遠鏡の中を覗いている。
それは天体観測でもする様な立派なものだった。
「君のお兄さん達、必死で君の事探し回っているよ」
そう言うと高木は立ち上がって俺の上に覆いかぶさる。
「くっそどけ!!」
足蹴りをくらわせてやろうと思ったが俺の脚は捕まえられ、開かされてそこに腰を押し当てられた。
ぞわっと鳥肌が立つ。
「さぁ、一松君鍵の閉められた密室、邪魔者はいないよ?一松君が僕だけを求めてくれるように調教してあげるからね?」
「や・・・めろっ、離せ!」
馬乗りされて顔を片手で掴まれ、もう片方の手で俺の目の前に赤い錠剤を見せられた。
「これが何かわかるかい?・・・媚薬だよ、飲んだことある?」
「あるわけねぇだろ!変態っ!」
「そうか・・・君のお兄さんはこういうことはまだしていないんだね?」
「--------っ!!?」
こいつ、カラ松と俺のこと知っているのか・・・
そこでふと、窓際に置かれた望遠鏡の事を思い出す。
望遠鏡を見やって「趣味悪っ、ヒヒ」と精一杯の反抗を見せた。
しかし、そんなのお構いなしで高木さんは続ける。
「初めから気づいてるよ?君とカラ松君って子が付き合ってるの。だってさ、一松君がカラ松君に向ける眼差し特別だもん。だから俺、猫より先にカラ松君殺るつもりだったんだよね」
俺は頭の片隅でカラ松が助けに来ることを願っていた。
だけど、それはまずい話なのかもしれない・・・
カラ松・・・来ちゃダメ!
でも、誰かが来てくれないと・・・俺は・・・きっと・・・
高木の手が伸びてきて俺の口に媚薬をねじ込んできた。
力いっぱい食いしばったけど顎を掴んでいた手で両頬を掴まれ、頬の裏側に当たる奥歯が痛くて思わず歯を緩めてしまう。
その隙間から媚薬が入ってきたら今度は口を押えられる。
媚薬は俺の唾液であっという間に溶けてのどの奥に流れ込んできて、反射的にごくりと飲んでしまった。
「んっぅ、んんん!!!」
「あ~あ、飲んじゃったね」
ほらみろ・・・
やっぱり俺なんかが幸せになるべきではなかったんだ・・・