第10章 歪み(モブサイコ編)
気分が悪くなったのかトド松が口元を手で覆った。
「トド松、大丈夫か!?」
皆の視線がトド松に集まる。
トド松には悪いが俺は今しかないと高木から離れる口実を並べた。
「弟が気分が悪いらしい、申し訳ないがこの辺で失礼する」
俺はそう言うとトド松を背負って歩き出した。
高木の姿が見えなくなったところでトド松が暴れだした。
「ちょっと、カラ松兄さんおろしてよ!」
「ああ、すまない・・・しかし顔色も悪かったが大丈夫か?」
「うん、まぁ・・・」
その時のトド松の表情に違和感を覚えた俺は、家に帰りつき、疲れ果てソファーで眠った一松にタオルケットをかけてやった後トド松を居間に呼び出した。
十四松は野球に、おそ松とチョロ松は俺達の帰りを待っていたが猫は無事だったと知るやそれぞれ出かけて行った。
居間には俺達二人だけだ。
「トド松、話してくれないか?」
「何を?」
トド松は手にしていたスマホをテーブルの上に置きこちらの話に耳を傾ける。
「あの高木ってやつと何かあったのか?」
トド松は何でそう思うのかと少し慌てた様子で聞いてくる。
「なんとなくそんな気がしたんだ・・・あいつが一松の体を触るのを見て青褪めて、しまいには吐き気がしたのか口を手で押さえていただろう?頼む、何か知っていることがあるなら教えてくれないか?」
と、その時襖が開いた。
一松かと思って見やると、そこに立っていたのはおそ松だった。
「どったの?二人とも真剣な顔しちゃって?」
「あ、いや・・・それよりおそ松、出かけたんじゃなかったのか?」
「うん、財布忘れた」
そう言うとてへっと舌を出して手の形をした椅子の上を指す。
椅子の上には確かにおそ松の財布が置いてあった。
財布の中身を取られてやいないかと確認するおそ松の裾をトド松が引っ張る。
「何、トド松?」
トド松はおそ松に手招きをしてしゃがませるとおそ松の耳元で何やら話していた。
するとおそ松がう~~~んと唸り、頭を掻きながらトド松の隣に座り込んだ。
「カラ松、トド松と高木さんの間に何かあったとして、それを知ってどうするの?」
「どうするとかそういうのはない・・・ただ、あいつに抱くこの感情の根源を知りえるかもしれないと思ったんだ」
おそ松は顎に手を当て少し考えていたがやがて口を開いた。