第2章 想い
十四松side
今朝から一松兄さんの様子がおかしい。
一松兄さんは時々夢にうなされている。
それは何も言わないけど皆知っていた。
その翌朝はだいたい元気がない。
でも、今日は特別元気がない。
そんな気がする。
一松兄さんとカラ松兄さんが出かけた後、僕たちは部屋に戻り円を描くように座った。
トド松も何か感じていたのか心配そうに口を開いた。
「今日の一松兄さん、大分弱ってない?」
「うん、僕もそう思う」
「やっぱり!?」
チョロ松兄さんと僕は相槌をうつ。
おそ松兄さんも今日は真剣な顔つきで頷いている。
すると、鼻からフーンと息を吐いて顎に手を当てたチョロ松兄さんが今朝のことを話し始めた。
「昨日の夜、多分一松うなされてたと思うんだ。僕は気づけなかったけど。でも、今回はカラ松すら気づけなかったみたいで、今朝降りてきて僕らと一松が居ないことに気づいたんだよね。何か関係あるのかな?」
「あると思う」
僕とおそ松兄さんが考え込む中、トド松が断言するように言った。
皆の視線がトド松に集中する。
トド松は視線に促されるように話し始めた。
「僕もいつも気づいてあげられてるわけじゃないみたいだから絶対にとは言い切れないんだけど・・・」
トド松が言うには、カラ松兄さんは毎回一松兄さんがうなされていることに気づいているらしい。
そして、どんなに起こしても起きないからうなされ終わるまで抱きしめて大丈夫大丈夫と声をかけてあげているらしい。
そうして、一松兄さんはうなされ終わるとそのまま眠りにつくらしい。
「でも、今日はカラ松兄さんも気づかなかったから・・・」
「カラ松に抱きしめられることにちゃんと効果があったってトド松は言いたいわけね?」
トド松はコクコクとおそ松兄さんの目を見て頷いた。
「でも、毎回気づけなんて絶対に無理だよね・・・」
僕はネコ目になって顎に手を当てて言った。
まーなーとおそ松兄さんが頭の後ろで手を組みぱたんと畳の上に横になったと同時に襖が開いた。
振り返ると一松兄さんが入ってきた。
「一松兄さんお帰り~」
僕は努めて明るく言った。
でも、うんと一言目も合わせずに部屋の隅に行く。
いつもならただいまと頭を撫でてくれるのに・・・
やはり今日は何故かダメージが大きいみたい。