第8章 新境地
一松side
目が覚めると部屋はもう明るかった。
カラ松の腕が俺を抱いている。
幸せに思い起こさないようにその腕にそっと触れた。
「ん?」
触れたそこに違和感を感じた俺はカラ松の腕を持ち上げて見てみる。
「はっ!!」
「ぅん・・・どうした?いちま・・・つ」
目を擦って大きな欠伸を一つ、カラ松が起き上がる。
「カラ松、この腕・・・」
カラ松の腕には四本のひっかき傷がいくつもついていた。
これは間違いなく、昨日の情事の際、快感に耐えようと無意識に俺が爪でひっかいたのだと直ぐにわかった。
ごめんと謝ろうとしたらカラ松に口を口でふさがれた。
「これはマイリルキティがつけてくれた愛の証なんだ、どうだ?良いだろう?」
ふふん♪とそれはそれは幸せそうに自分の腕に頬を寄せるカラ松を見て顔が熱くなった。
そして昨夜の事を思い出し俺は物凄い自己嫌悪に陥る。
そして堪らず窓を開けて身を乗り出した。
「ホワイっ、いちまぁあああつ何をしているんだ!!?」
「死なせて!もうあんな醜態さらして生きていけない!」
「何が醜態だっていうんだ!?ベリーキュートだったぞ!?」
窓際でギャーギャーやっているとはだけた浴衣の襟から何かが転げ出てきた。
それは一瞬宙を舞い、再び俺の襟元に帰ってくる。
俺は慌てて鏡の前に走った。
鏡を見て言葉を失った俺の肩をカラ松がポンと叩く。
「よく似合ってるじゃないか?」
「から・・・まつ・・・何で、これ・・・え?」
俺の首に身に覚えのないシルバーのチェーン。
そしてそのチェーンの中心には紫色の瞳をした猫がぶら下がっていた。
俺は思わず振り返ってカラ松に抱き着いた。
「クソ松!馬鹿っ!!馬鹿クソ松っ!!」
「ひどいじゃないか、一松ぅううう、そんなに言わなくても」
「だって!!・・・俺の心臓壊しちゃう気?」
俺はドキドキと煩い心臓の鼓動を伝えるつもりでカラ松に強く体を密着させた。
そして伝わってくるカラ松の体温と・・・
ドキッドキッドキッ・・・
俺は思わずカラ松を見上げた。
「ほらな?」
と微笑むカラ松。
その首元には青い瞳の猫がぶら下がっていた。