第8章 新境地
目の前からくすくすと笑い声が聞こえた。
見上げるとカラ松が笑っている。
俺がムッとするとカラ松はすまないと言って笑いをこらえ、カバンをあさる。
「写真でも撮るか?勿体なくて食べられないだろう?」
「・・・いいの?それこそ勿体ないよ?」
「勿体なくなんてないさ、これだって立派な思い出だろう?それに、チョロ松とトド松なんか喜びそうじゃないか」
そう言ってカラ松はシャッターを切る。
カシャ、カシャッ!
「は!?二枚も!」
「二枚目は一松も入ってる」
にこりと笑うカラ松の弁慶に一発見舞ってやった。
パンケーキは見た目だけじゃなく味も最高だった。
甘くて幸せだった。
俺一人じゃ到底ありつけなかった。
だけど、お礼を言う勇気はなかった。
店を出るとおそ松兄さんの酒を探しに行こうとカラ松が土産屋に入っていった。
金が無いと言うとカラ松は俺に任せろハニーとか言っていた。
あいつ貯金とかできるタチだったか?と疑問に思ったが持っているということはしていたのだろう。
酒を選んでいたらカラ松がトイレに行ってくると近くの公衆トイレに向かったので俺は適当に店の中を見て回った。
やはり猫のモノは多く、見ていて飽きなかった。
そうやって店の中を歩き回っていてレジの前に差し掛かった時あるものが目に入った。
インスタントカメラだ。
俺は一番枚数の少ないカメラを一つ買ってカバンに忍ばせた。
「一松、悪いな一人にして」
「ううん、それよりおそ松兄さんだけ酒買って行ったら皆怒るんじゃない?」
「あぁ、皆の分も菓子か何か買えばいいだけだろ?」
「本当にそんなお金あるの?旅館でもお酒開けてたでしょ?」
するとカラ松は慌ててサングラスをかけた。
あ~あ、掛けちゃった。
俺、お前のその瞳に見つめられるの恥ずかしいけど・・・嫌いじゃないのに。
そんなことを考えて居たら思いもしない言葉が返ってきた。
「バイトしてたんだ」
「・・・は?」
「黙っていて済まない・・・一松に格好いいところを見せたくてな」
そういうと詳しいことは後でゆっくり話そうと言って土産選びを再開した。