第8章 新境地
一松side
二日目の朝、少しゆっくりした朝を過ごし、神社に向かった。
カラ松はにこにこしながら俺を案内してくれる。
今日は少し肌寒い。
俺が少し身震いするとカラ松が俺の手を取り自分の上着のポケットへ入れた。
「人が見てるだろ!」
慌てて手を引っ込めようとしたが馬鹿力で掴まれる。
「ってーよ!」
「こうすれば問題ないだろ?」
そう言ってカラ松は俺の上着のフードを被せてきた。
「これならぱっと見男かどうかなんてわからないだろ?一松は細身だし、俺がボーイッシュな彼女を連れている感じにしか見えないと思うぞ?」
「そういう問題じゃっ!・・・ま、いい・・・けど」
俺は気づかれないようにカラ松に少し体を寄せた。
神社について俺は唖然とした。
鳥居に猫、賽銭箱に猫、軒下に猫、御神木に猫。
所狭しと猫が寝そべっていた。
「どうだ、一松?気に入ったか?」
「うん・・・あ、ありがとう」
「一松、これをやると良い」
カラ松の手には予め準備しておいたのか、俺がいつも買っている煮干しの袋が握られていた。
嬉しそうに笑うカラ松に俺も微笑み返す。
そしてさっそく猫達に触れに行ってみる。
煮干しを手に、しゃがみ込んで猫が自分達から近付いてきてくれるのを待ってみる。
観光地傍なだけあって人に慣れているのかすぐに寄ってきてくれた。
俺は猫との幸せなひと時を堪能した。
楽しい時はあっという間に過ぎてもうお昼だった。
俺の腹が鳴る。
「一松、飯食いに行くか?」
「うん、そうだね」
俺達は昨日の通りで昨日食べれなかったものを食べ歩くことにした。