第8章 不器用な恋
大倉side
家の中が
カレーの匂いで満たされてる…
何もせずに家にいたら
なのかのことばっかり考えてしまうから
冷蔵庫にあった
ありたっけの材料を鍋にぶっこんで
グツグツと煮込んでる今
結局カレーを作りながらも
なのかのことを
考えてしまってるやんか(笑)
"好きなだけじゃあかん…"
それは一番最初に
横山くんに教わったことやのに
なんでこうも俺は
なのかのことに関してだけ
ダメダメなんやろ…………?
泣かしたくないのに
泣かしてばっかりで…
好きで仕方ないのに
うまくいかへん…
いっそなのかの手を離して
楽になる………?
なんて…
到底無理そうな考えに
現実逃避してたら
それを邪魔するように
カレーの匂いで満たされた部屋の中に
インターホンの音が響き渡る…
「はいはい………誰ですか………?」
なんてモニターも見ずに
開いた扉から
「たつ兄……………」
そんな…
どうしたって嫌いになんかなれそうもない
可愛い声がして
俺の体を小さななのかの腕が
包み込む………
ほらな………?
やっばりどう頑張ったって
無理やんか(笑)?
だって俺の胸は
なのかの声を聞くだけで
なのかに触れられだけで
こんなにもうるさく騒ぎだす………
とどめはこれや………
「たつ兄好き…………」
ほらもうあかん………(笑)
今そんなん言われたら
泣いてしまうやんか……………?