第8章 不器用な恋
裕兄とすばちゃんが出掛けて
一人になった家の中
仕事に行く準備をしていると
"ピンポーン………"
玄関から響くインターホンの音に
体がびくりと震える……
外から聞こえてくる
"なのか(笑)?"
そう私を呼ぶ声に
震える手でカチャリと鍵を開けると
「良かった…
まだ仕事行ってなかったんやね(笑)?」
なんて笑顔のひろが
扉を開け中に入ってくる……
「朝からどうしたの…………?」
そう震える手を必死に押さえつけ
聞いた私にひろは
「うん……?
ほら昨日なのかの彼氏家に来てたやろ?
やからちょっと心配になっちゃって(笑)
なぁ…なのか…………?
なのかにあいつはもう必要ないよね?
だってなのかには
もう俺がおるんやから(笑)?」
そう言って
私の頬に手を伸ばした
ヒヤリとしたひろの手に
ぞくりと鳥肌が立つ…
「ねぇ…ひろ………
もうこんなことやめようよ……?
こんなのひろらしくないよ…?」
そう言ってひろの手から顔をそらすと…
「なのかの言う俺らしいって何?
今の俺が俺なんやって
いつになったら理解すんの(笑)?
だからあいつが側におったら
ダメなんやって……(笑)
俺が側におるんやから
別れられるよね………?
だってなのかは優しいから…
あいつを俺から守るんやもんね…(笑)?」
なんてひろは私の顔を両手で包み込み
私の目を笑顔で見つめる……
そんなひろの笑顔の前に
「ひろの言うとおり別れるから………
だからたつ兄には何もしないで……?」
ぽたぽたとこぼれ落ちる涙を拭いながら
そう言った私にひろは
「いい子やねなのかは(笑)
じゃあ今日は
久々にここでデートしようか?
いつも俺の家じゃ
裕兄もええ顔しないしね(笑)?
じゃあ…後でね………(笑)」
なんと嬉しそうに笑って
キスをする………
ひろが出ていった家の中
床に座り込み一人呟いた…
「誰が助けて…………?」