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ブラック・リード (鉄血のオルフェンズ)

第2章 ゼロ・ニ


「ところでよ」
「ん?」
「お前、薬とか作れるか?」
「なぜ」
「ここをのっとる」
わたしは、思わず救急箱を取り落としそうになった。包帯や薬がケースの中でガタガタッと揺れる。ありえない話じゃない。むしろ、まともな判断だと思う。社長がいない今、次に指揮をとるのはあの大人たちだ。奴等は屑だ。参班組はいずれ、部品のように使い捨てられる。
「しかし急だな…。策は?」
「だからお前に聞いたんだ。睡眠薬が欲しい。それも、強力なのがな」オルガは力のこもった目でわたしを見つめて「…頼めるか?」
「…分かった。本気なんだね、オルガ」
「あぁ。サンキューな」


という訳で今、わたしの手には小さなハードカプセルがある。中身は、医務室でこしらえた粉末の睡眠薬だ。何しろ急だったので、効果を試す時間はなかった。
誰もいない厨房に入って、鍋の蓋をあける。アトラが作った、具だくさんの野菜スープが入っている。そこへ、ぽちゃんとカプセルを落とした。
「あ~!!バレットさん!つまみ食いはダメですよ!」
振り替えると、アトラがいた。思わず肝の辺りが冷えた。まさか、見られた…?
「…バレットさん?どうしたんですか…」
「あ、あぁ。わりぃ。旨そうな匂いがしたんでつい、な…」
「も~。バレットさんの分もちゃんとありますから、安心してください!」
「すまねぇ。悪い虫は出ていくから、そう怒るなよ」
わたしは部屋の外へ出ると、大きく息を吐いた。
危なくアトラを巻き込むところだった。次はもっと、背後に気をつけなきゃ。
彼女の注意はもう逸れていたが、どこか緊張した気持ちで食堂に向かった。三日月と、ビスケットの妹たち、それからクーデリアが見えた。名前を呼ぶと、ミカが振り向く。なに食べてんの、とわたしは言った。
「晩飯」
ミカの椀には、厨房で見たものと同じスープが入っていた。違いをあげるとすれば、具の大きさが不揃いなくらいだ。
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