第2章 深層心理操作Ⅱ
真夜中にすっと目を開ける。
空に細く三日月がかかり、物音一つしない静かな夜だ。メアは暗い部屋の中でむくりと起き上がった。
ベッドに入ったは良いものの、そもそも寝てなどいなかった。
眠れるわけがない。今日は、アリスのところへ出かける日だ。
「くく…」
真夜中にアリスの部屋へ忍び込み、彼女に調教をするようになってから、どれほどの日が流れただろう。毎日訪れるわけにもいかないので、ランダムに日を空けては彼女に自分を教え込み、ひと月ほどが経過しようとしている。
訪れた回数は勿論覚えている。何をしたのか、彼女の反応はどうだったか、仕草のひとつひとつも、匂いも呼吸も、着ていた服も翌日の様子も何から何まで尽く記憶に刻まれている。
それでも、この時間に起きた時の、まるで初めて念願を遂行するような期待は、露ほども薄れることはなかった。
寝間着のままではゆったりしていて動きにくい。私服のボトムを履きシャツを羽織り、面倒だとばかりに裾は出したまま、釦は胸まではだけたままで靴を履いた。
(不思議だ…、こんなこと今までになかったのに。こんなにドキドキして楽しいこと、今までに無かった。やっぱりアンタが特別だからだ)
キュアランの人形には一度も見向きもしないまま時間を確認すると、片目を閉じて手で覆い、滑るようにメアは部屋を出た。