第1章 深層心理操作
アリスの部屋の前に居た警備兼従者は、壁にもたれ崩れて眠り込んでいる。まずは上々だ、と笑みが深くなった。
事前にアリスには焼菓子を渡している。美味しいと評判の店のものだ、従者も好きだと言っているのを聞いた事があるから、もしロに合わなかったら奴にあげればいい。
そう言えば彼女は、例え口に合っても従者にお裾分けするだろう。そう読んで、買った菓子に眠り薬を塗りつけておいたのだ。
この様子では、自分の読みは当たったらしい。
密かに作っておいた合鍵を使って扉を開け、蛇のように素早く忍び込んで内から鍵を閉める。
視線を移すと寝台にはアリスが眠っている。起きる気配はない。
ああ、やっとこの日が来た。
堪え切れず笑いを含む溜息がこぼれる。憐に立って見下ろし、眠る頬に触れ、静かに規則的に呼吸を繰り返す薄紅の唇をなぞる。
「…アリス」
触れても呼びかけてもぴくりとも反応しない。念の為、上体で覆い被さってそっとロ付けてみる。
起きない。
菓子を食べていないかもしれない可能性は、これで排除された。眠り薬が効いているのは確実だ。
(途中で目を覚ましても、それはそれで愉しそうだけどな……)
少し想像しただけでも胸がふくらむ。
しかしそれは今日の目的ではない。もう少し後にとっておくものだ。
寝台に静かに乗り上げてアリスの体の両側に膝をつき、胸上に跨がって膝立ちになる。柔らかい布団がメアの体重分だけ沈んだ。
(細い体だ。オレの脚の間で狭めるじゃないか)
眼下ですやすや寝息を立てる顔をじっと見下ろし、頬を憮でた手を首筋まで滑らせ、滑らかな肌の感触を楽しむ。寝巻きの肩紐に指を引っ掛けて下ろすと胸元が覗き、ふっくらとした胸に続く緩やかな曲線に目を奪われた。
白い胸肌に触れた手が熱い。手だけじゃない、頬も目も首も、体中が。
もう片方の手で自分の股間に触れてみると、期待だけで熱が芯を持ち始めていた。
「ふ……、」
血が奔流になって体中を駆け巡っている。さあ、いよいよだ。
舌なめずりをしてズボンの釦を外してジッパーを下げ、下着の合間から自身を取り出す。
ためらいなく現れる熱。ふるっと揺れたその先がアリスの肌に触れた。