第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
どれだけそうしていただろう。
もはやこれ以上は無意味だと悟ったチョッパーは、ゾロに向かって首を横に振る。
ゾロも心臓マッサージの手を止めると、クレイオはその場で泣き崩れた。
「どうして・・・死なないで・・・!!」
その悲痛な叫びに、かけてやる言葉がゾロもチョッパーも見当たらなかった。
「私はいったい・・・今までなんだったの・・・?」
「クレイオ・・・弟のことは・・・」
「なんで・・・お父さんも・・・お母さんも・・・みんな死ななきゃならないの?!」
どうして、神様はこんな仕打ちをするのか。
どうして、ただ“信じた”というだけで死ななければならないのか。
本当に孤独となった今、もはや生きていても意味がない。
クレイオは床に転がっていたナイフを手に取ると、首に突き刺そうとした。
「てめェ、バカな真似はやめろ!!」
しかし、刃が喉に刺さる一瞬前に、ゾロに手を叩かれナイフを落としてしまう。
それでも、“死にたい”という気持ちは止まらなかった。
「お願い、死なせてゾロ! 私は・・・私はもう、生きていくことに耐えられない!!」
島中からの恨みを買い、娼婦に堕ちても耐えてこられたのは、弟がいたからだ。
あの事故の真相を知り、守るものを失った今、自分にはもう生きていく気力がない。
「ゾ・・・ゾロ・・・この人はいったい・・・?」
チョッパーが目に涙を浮かべながらゾロを見上げる。
ただならない事が起こっているのは、トナカイの目にも明らかだった。