第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
「クレイオ、おれが来るまでの間に何があった?」
ゾロはクレイオが自殺を図らないよう、両腕を掴みながら顔を覗き込む。
「・・・お前を犯してた野郎、いつもの客だよな? 一緒に住んでるわけじゃねェんだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
天井から垂れるロープはまるで、誰かを吊るしていたように見える。
そして、弟の手首が紫色に変色している。
チョッパーもそのことには気づいているようだった。
「さっき・・・父の会社の副社長だった人が来て・・・言ったの」
炭鉱事故は、起こるべくして起こったこと。
副社長が私利私欲のためにクレイオの父を騙していたこと。
「私はいったい・・・いままで何のために耐えてきたの・・・? でも、起こったことは変えられない」
「・・・・・・・・・・・」
「これからも島の人達に恨まれ続けていかければいけないのなら、せめて死なせて欲しい!」
もう守るものなど無い。
この身体も穢れきっている。
今更、自分を愛してくれる人が現れるわけでもない。
ならば、そんな人生などもう終わらせてしまいたい。
クレイオが起こったことの全てを語ると、それまで静かに聞いていたゾロが口を開いた。
「チョッパー・・・こいつの弟を頼んでもいいか?」
「え・・・うん。調べたいこともあるし・・・」
彼の死はいつ、何が原因だったのか。
それを明らかにするのが、死を宣告した医者の最後の務めだ。