第2章 ある娼婦と海賊のはなし ~ゾロ編~
ゾロの目に飛び込んできた光景は、床に押し付けられながら無残にも男に犯されているクレイオ。
殴られたのか、鼻から血が出ている。
随分と抵抗したようだったが、それでも男の力には勝てず、乾いた性行為の音が響いていた。
「テメェ・・・!」
チャキッと刀の鳴る音がしたかと思うと、クレイオに馬乗りになっていた男が顔を歪めた。
次の瞬間、背中から血を吹き出しながら、スローモーションのように後ろに倒れていく。
「え・・・?」
何が起こったか分からなかったのは、斬られた男だけではない。
クレイオも涙でグチャグチャになった顔で、刀を鞘に納めているゾロを見上げた。
「ゾロ・・・?!」
「おい、クレイオ。これはいったい───」
自分がこの家に来るまでに何が起こったのか。
それを聞こうとしたところで、チョッパーが叫び声を上げる。
「ゾロ!! 大変だ、この子、息をしていないよ!!」
ベッドの上で横たわる弟は、すでに心臓が止まっていた。
まるで、すぐそばで凌辱される姉の姿は見たくないとばかりに・・・
「なんとかしろ、チョッパー!!」
「体温が低すぎる・・・ゾロ、心臓を圧迫して!!」
蘇生の見込みはない。
だけど、チョッパーはゾロに心臓マッサージの指示を出した。
医者として、消えゆく命を諦めることはできない。
しかしそれ以上に、今まで辱められていた身体を隠そうともせず、名前を叫びながら弟に手を伸ばしているクレイオのためでもあった。