第10章 機械仕掛けの海賊はブルースを歌う(フランキー)
手術が成功したといっても、そこから数日間は予断を許さない状況だった。
感染症を起こせば発熱し、機械部分にどのような影響を及ぼすか分からない。
外科医トラファルガー・ローのポーラータング号なら医療機器がそろっているだろうが、必要最低限の備えしかないサニー号では衛生管理を徹底することだけでも精一杯だ。
それを思えば、術後10日経っても細菌感染を一切起こさせなかったチョッパーの功績は大きいだろう。
そして、もう一人。
「ほら、食べなよ。消化器官には何も手を加えていないから腹減っただろ」
サンジが体調に合わせて作る料理は、クレイオの回復を早めた。
粥やスープなど消化に良く栄養もある食事、しかもどれも最高に美味なのは、彼が優れたコックであるというだけでなく、栄養士としても高い知識を持っているということ。
これほどの“攻めの料理”を作るのは、海軍本部の料理長ですら不可能だろう。
目を覚ましてからの数日間で改めて麦わら海賊団がそこらの海賊たちとは一線を画す存在であることを思い知らされた。
そして、チョッパーの保険室に備え付けられたベッドで安静にしているのも今日が最後。
「今日からいよいよ立つ訓練を始めるらしい。少しでも食って体力つけなきゃな」
つまり、ここから先はクレイオの勝負となる。
麦わら海賊団がその技術の限りを尽くして与えてくれた脚を使いこなすことができるかどうか。
「・・・・・・・・・・・・」
手術が終わってからまだ一度も立ったことがない。
ベッドに横たわりながら“新しい脚”を何度も動かそうとしたが、鉄の塊がそこにあるという感覚だけでピクリともしなかった。
本当にこれが自分の意思通りに動くようになるのだろうか───