第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「・・・怖い」
クレイオはほぼ無意識にそう呟いていた。
ゾロの手は決して自分に触れていない。
服をはだけさせようとも、服の上から愛撫してこようともしない。
ただ、クレイオを見下ろしながら自慰をしているだけ。
なのに“怖い”と思ってしまうのは、彼の魅力に引きずり込まれそうになっているからなのかもしれない。
必死にそんな自分を否定しようと目を逸らすと、急に口を塞がれた。
「んんっ」
おれ以外を見るんじゃねェ。
まるでそう命令するかのように、強引に捻じ込んでくる舌。
口内を犯されていくうちに、苦しいのと、衝動を抑えられなくなったのとでゾロの背中に両腕を回した。
ゾロもそれを待っていたのか、クレイオの後頭部の下に左手を入れると、抑えるようにして唇を重ねてくる。
「はっ・・・はっ・・・」
ゾロの呼吸が荒い。
もう絶頂が近いのか。
ああ、このまま射精されたら洋服が汚れる・・・
それこそ、この間のように腹を殴って逃げるか、洋服を諦めるかすれば良かったのかもしれない。
しかし、酸素が欠乏した思考回路で考えたのは、“受け止めてあげなければ”ということ。
「ゾロ・・・」
ブルブルと震えている腫れた亀頭に右手をあてがう。
すると、それを待ち構えていたとばかりに、ゾロは先端をクレイオの手の平に擦りつけてきた。
───熱い・・・
これが猛獣の欲望か。
この熱に包まれたら、私の身体など一瞬にして灰となってしまうかもしれない。
「・・・クッ・・・」
ゾロの呼吸が一瞬止まった。
直後、熱い白濁液が手の平に放たれる。
「クレイオ・・・」
ビクンと身体を震えさせながら名を呼んでくるゾロに、もう少しで返事をしてしまいそうになった。
まだこの人の欲望そのものを受け止める勇気などないというのに。