第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「ふっ・・・」
目の前の男はもしかしたら、人間の皮を被った獣なのかもしれない。
肩から滲む血の匂いを漂わせながら、獲物の味を確かめるように舌を唇から頬に這わせ、最後は耳たぶを食む。
このまま食いちぎられてしまうのではないかという恐怖と、少しザラついた舌先の感触に、悪寒とは違う震えが背筋に走った。
ゾロはこれを愛撫のつもりでやっているのか、それとも相手の動きを封じるためにやっているのか。
「おい、動くなよ」
ああ、後者の方か・・・とクレイオは思った。
顔にかかっていた髪がうまい具合に視界を遮っていたのに、無骨な指でそれを払われ、ゾロの鋭く熱っぽい視線にさらされる。
「勝手なことしたら、どうなるか分かんねェぞ」
仰向けに倒れた自分を抑えつけてくるゾロとの距離は30センチ。
少しでも上半身を起こそうというそぶりを見せれば、すかさず唇を塞がれ、むせかえるまで呼吸を奪われる。
苦しいのに、嫌悪感があるはずなのに、抗う事ができない。
「ゾ・・・ロ・・・」
「黙ってろ」
無慈悲な猛獣は、クレイオに抵抗の意志がないことを確認してから、窮屈そうにズボンを押し上げていた自身を引っ張り出した。
「なんだよ、男のモンを見んのは初めてか?」
「は、初めてじゃないけど」
「なら問題ねェな」
問題ない?
いったい何を言っているのだろうか、この男は。
男性器は見たことも、触ったこともあるが、ゾロのそれはこれまで関係を持ったどの男性よりも大きく、凶暴そうだ。
この近距離で見せられて、冷静でいられるわけがない。
「おい、こっち向け」
ここで目を逸らしたままでいるのは負けたような気がするが、かといって言いなりになるのも癪。
どうしようかと悩みながら顔を右側に背けていると、頬を掴まれ強引に上を向かされた。