• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)




「ちょっと・・・怪我してるんでしょ」
「血は止まった。あとは飯食って寝りゃ治る」

そう言うと、軽く微笑みながら赤い舌を出して、クレイオのこめかみについていた血をペロリと舐めとった。

まるで捉えた兎をこれからゆっくり味わおうとする、狼のごとく。


「お前の肌、おれの血の味と匂いがするな」


満足そうに笑い、今度はクレイオの唇をペロリと舐める。
キスとは違うその感触に、嫌悪感ではなく恐怖が込み上げてきた。


───喰われる・・・!


「ゾロ、放して!」

「今さら無理だ。おれの匂いをつけたお前を逃がすわけねェだろ」


匂いは縄張りの証。
お前は今、おれのものだ。


「無防備な顔してたお前が悪い。おれの部屋でいいな?」

「ゾ、ゾロ・・・?!」

傷の手当をしてあげていたというのに、その礼がこの仕打ちか。
手を振りほどこうにも相手の力が強すぎて、無理やりやったら骨が折れてしまいそうだ。

ここで叫べば、ペローナには聞こえるだろうか。
ミホークは・・・来てくれるかどうか分からない。

言いなりになってはいけないと分かっているのに、クラクラするようなゾロの血の匂いが思考を鈍らせる。


「オラ、観念しろ」


米俵を担ぐようにクレイオを肩に乗せたゾロ。
巻きかけの包帯がバラバラと床に落ちたが、気に留める様子はない。


「ゾロ、下ろして・・・!」

こうなったら背中を殴ってやろうと思い、拳を振り上げた瞬間。
クレイオの目が何かを捉え、その手が止まった。

「お、降参したか?」

「・・・・・・・・・・・・」

身体の前半分にはたくさんの刀傷を負っているゾロなのに・・・
背中には、一切の“逃げ傷”がない。

「ゾロ・・・」

それが示すのは、剣士としての誇り高さ。


───やはりミホークが認めるだけのことはある。


「・・・ゾロ、お願い。下ろして」

「観念したようだが、却下だな。このままお前を担いでいくのも悪くねェ」

ゾロは微笑むと、クレイオを左肩の上に乗せたまま、少しのブレもない足取りで居間をあとにした。








/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp