第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「シャツを脱いで」
「ん」
救急箱を傍らに置き、汗と血で汚れたタンクトップを脱がせると、露わになったのは隆起した大胸筋。
脂肪などまったくないのでは、と思うほど、一本一本の筋繊維が目に見えそうなくらい張っている。
そして目を右肩に向けると、そこには3センチほどの刀傷があった。
「貴方は本当に、長生きしないタイプね」
おそらくミホークが上手く斬ったからだろう、縫合が必要になるギリギリ一歩手前の深さ。
それでもこんなことが毎日続くなら、いつか死に至るような怪我を負っても不思議ではない。
ゾロはしみる消毒液に眉をひそめながら口を開いた。
「別に長生きしなくてもいい」
「どうして。早死にしてもいいというの?」
「長く生きれるなら、それに越したことはねェよ」
その言葉に、ゾロの傷口にガーゼを当てていたクレイオの手が止まる。
「だが野望を叶えられずただ生き長らえるだけなら、おれは野望を叶えるための死を選ぶ」
だから仲間と離れ離れになったし、敵であるミホークにも頭を下げた。
その結果、命を削ることになったとしても構わない。
「おれにはあと一年しかねェんだよ。それまでにミホークを倒せるぐらい強くならねェと、“意味”がねェんだ」
なんて強い意志なのだろう。
毎日、毎日、歩くことさえままならないほど疲弊し、傷だらけになっても、その瞳はただ真っ直ぐと一点を見つめている。
己の野望を叶える、ただその一点を。
「ゾロ・・・」
その野望とは、つまり・・・
ジュラキュール・ミホークを殺すこと。
「・・・どうした?」
手の震えを悟られたくなくて慌てて離れようとしたものの、少々遅かったようだ。
間髪入れずに、乾いた血のこびりついた手が伸びてきたかと思うと、強い力で右手首を掴まれる。