第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
ゾクリと身体の芯に響く、寒気のような感覚。
ああ・・・そうか。
この覇気だ。
七武海のゲッコー・モリアに育てられたペローナと、シャンクスに鍛えられた自分だからこそ、距離があればこうして普通にしていられるが、覇気を知らない人間がここにいたら気を失っているかもしれない。
「やっぱりミホークの覇気はすごい・・・」
同様に、ゾロの覇気も日に日に強くなっている。
これならば、赤髪海賊団の海賊達にも引けを取らないのではないか。
そして不思議・・・
「なんか、ミホークの覇気に似てきている気がする」
毎日、楽しそうに刀を持って修行に行くゾロ。
笑みを携えるその顔には狂気すら伺える。
そこまで力を欲するのは、いったい何のため?
“おれは“鷹の目”を知ったその日から今日まで、必ずそいつを倒すと心に誓ってきた”
ゾロ・・・貴方は、ミホークを殺すの?
シッケアールの生暖かい風が、クレイオの髪をなびかせた。
微かに感じる、力と力のぶつかる気配。
もし、ゾロが“鷹の目”を凌駕する時がきたら・・・
“諦めろ、お前はおれから逃げられねェよ”
私は成す術もなく、野獣に喰い尽くされてしまうのだろうか。
そんな私を、ミホークはどう思うのだろうか。
「お母さん・・・」
貴方は今、聖母様にお仕えしているのでしょうか───
「聖母様・・・どうか私に力をお与えください」
私の祈りがどうか、届きますように。
「憎しみのあるところに愛を・・・絶望のあるところに希望を・・・」
そして・・・
「闇のあるところに光を・・・この手でもたらすことができますように」
聖女から生まれた悪魔の子、クレイオ。
祈りの言葉を口にする彼女のロザリオが、優しく揺れていた。