第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「いくらシャンクスの弟子だからと言って、いきなり城にやってきて居候し始めるのはおかしいじゃねェか」
「私に言わせりゃ、いつか倒そうと思っている男に弟子入りするお前も相当バカだと思うがな」
それは一年前、麦わらの一味が離散した時に、そうする事が一番だと思ったからだ。
世界最強の剣士を倒すには、生半可な修行ではダメだ。
自力での鍛錬には限界があるし、ミホークに及ばない師匠の元についても意味がない。
最短距離であの男に近づくには、あの男自身に稽古をつけてもらうしかなかった。
“おれの首を狙う剣士を、おれの手で育てろと言うのか!? おかしな奴だ・・・!!”
手をついて頭を下げるゾロに、ミホークは笑いながら弟子入りを承諾した。
思えば初めて会った時から、自分を越える存在になるとゾロに期待しているような態度だった。
それなのに、クレイオが来てからの数週間は稽古をつけるどころか、剣を握ろうとさえしない。
「ミホークの様子もおかしいだろ・・・あの二人は何なんだ」
すると、ペローナはキョトンとした顔でゾロを見つめた。
「なんだお前、知らねェのか?」
自分で質問しておいておかしな話だが、ゾロはまさかペローナがそのような反応をするとは思っていなかった。
むしろゾロが知らなかったということに驚いている様子だ。
「お前、知ってるのか?!」
「ああ、だってクレイオ本人から聞いたからな」
すると、ゴーストプリンセスは優越感からか意地の悪い笑みを浮かべた。
「知りたいか?」
「・・・もったいぶらずに教えろ」
「どうしようかなァ。私の言うことを何でも聞くというのなら教えてやってもいいぞ」
「おい!!」
「あーあー。知りたくないというなら別にいいんだぞ、私は」
「・・・・・・・・・・・・」
非常に不本意だが、ここは黙って言うことを聞かないと教えてくれそうにない。
ゾロはこめかみに血管を浮き上がらせながら頭を下げた。
「最初から素直にそうすりゃいいんだ」
ポンポンと緑頭を叩き、満足そうに笑う。
「ミホークとクレイオはな────」
次の瞬間、ゾロの瞳が驚きで大きく開いていた。