第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「げッ・・・お前、その顔どうした?!」
布巾を持ってテーブルに戻ってきたゾロの鼻から血が出ているのを見て、ペローナがギクリとした顔で叫んだ。
「なんでクレイオの手伝いをしに行って、鼻血を出して帰ってくるんだ?! ミラクルか!」
「うるせェな、お前には関係ねェ」
不機嫌そうにテーブルの上を拭くゾロだったが、拭いているそばから鼻血がたれ落ちて、綺麗にしているのか汚しているのか分からない。
たまりかねたペローナが手伝い始めると、それまでワインを飲んでいたミホークが静かにグラスを置く。
そして、厨房の方をチラリと見た。
「・・・・・・・・・・・・」
殴られたゾロに、戻って来ないクレイオ。
その事に何を思ったのだろう。
鷹のごとく鋭い瞳が、今度はゾロに向けられる。
「ロロノア。貴様、いつからそのような目をするようになった」
「あ?」
“そのような目”とは、いったいどう意味か。
ゾロが首を傾げると、ミホークはグラスの底にワインを残したまま席を立った。
「テーブルに落ちたその血、染みが残らないよう拭いておけ」
「あ、おい!」
「───不浄の血で月を穢したくはないからな」
月・・・?
窓から見える夜空のどこにも月など見えない。
いったい彼は何を言っているのだろう。
ミホークが食堂から出て行った後で、ペローナがニヤニヤとしながらゾロの顔を覗き込んできた。
「お前、ミホークを怒らしたな」
「怒らせる? なんでおれが」
「さァ、テーブルを汚されたのが気に入らなかったんじゃないか」
「そんな器の小せェ男かよ、あいつは」
なら、何故・・・?
ゾロはふと厨房の方に目を向けた。
「なァ、ゴースト女・・・クレイオとミホークはどういう関係か知っているか?」
「クレイオとミホーク?」
ペローナは“私にばかり掃除をさせるな”と、ゾロに布巾を投げつけた。