第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
ゾロが垂れ流す殺気に対しての抵抗・・・いや、もはや威嚇に近いか。
普段は穏やかな淡褐色の瞳が、金色に光る。
それはまさしく、“鷹の目”。
ああ、もしかしたらシャンクスはこの女が時折見せる、猛禽類さながらの気高さと気迫に惚れこんだのかもしれない。
「・・・・・・・・・・・・」
そして、ミホークもまた然り。
「・・・ゾロ・・・?」
自然界の食物連鎖で頂点に立つ鷹。
自由と力を象徴する強き鳥に、海賊である自分が憧れないわけがない。
ゾロはふと微笑んだ。
「悪ィな」
そして一歩、クレイオとの距離を詰める。
「お前が何者か・・・ひとまず今はどうでも良くなった」
おれは海賊であり、最強を目指す剣士。
目の前に強者がいれば、捻じ伏せたくなるのが性。
右手を伸ばし、クレイオの左手首を掴む。
「・・・!!」
身体を強張らせながらゾロを睨むその目にゾクリとした。
クレイオが鷹ならば、ゾロの瞳もまさに肉食獣のそれ。
赤い舌で唇を舐め、目の前の女を“捕食対象”として捉える。
「ゾロ、放して。それとも、私を殺す気なの?」
クレイオの顔に恐怖の色はない。
ただ、静かにゾロという猛獣の出方を探っているようだった。
ああ・・・たまらねェ。
クレイオの手首を掴むゾロの右手。
そこには先ほど、性欲を鎮めるために解放した熱の名残が残っている。
手を洗っちまう前で良かった、と無意識に思った。
ゾロは口の端を上げ、今度は手の平を擦りつけるようにクレイオの頬を撫でる。
精液の匂いがすることに気づかれても構わない。
とにかく、この女に自分の匂いをつけておきたかった。
「安心しろ、お前を殺す気なんかねェよ」
お前がミホークの女だろうと、シャンクスの女だろうと構わねェ。
最終的におれの物にすりゃ、それで済む話だろ。
構わねェよな、鷹の目。
どうせおれはいつかお前を越えるんだ。
世界最強の剣士の称号と一緒に、女も頂くことに決めた。
“マーキング”とばかりに、右手でクレイオの頬と唇を撫でるゾロ。
獲物を捉えたその瞳は獰猛だったが、同時にとても真っ直ぐで・・・
抗いようのない魅力がそこにあった。