第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
それはまさに壊れた水道の蛇口から噴き出す水のごとく、抑えようのない色欲だった。
触らずとも、身体の中心に熱が集中しているのが分かる。
女の裸を見たわけでも、妄想をしたわけでもない。
引き金となったクレイオとミホークが寄り添う光景だって、欲情を急き立てられるような要素はなかった。
それなのに、ズボンのチャックを少し下ろしただけで飛び出さんばかりに怒張している自身に、怒りすら覚える。
最後に女を抱いたのはいつだっけ・・・?
ああ・・・確か、寂れた炭鉱の町の娼婦だったな。
女の肌の柔らかさを思い出しただけで、さらに強まる情欲。
もう男根ははちきれんばかりだ。
普段は歯止めをかけることができるのに、いったいどうしちまったんだ、おれは。
「くっ・・・」
握った先から滲み出た透明の分泌液が指に絡み、ゾロは顔をしかめた。
これはきっと、久しく自慰行為をしていなかったからだ。
まだ20歳なのだから、性欲をコントロールしきれなくても仕方がない。
そう思わないと、未熟な自分を許すことができなかった。
麦わら海賊団はフランキー、ロビン、ブルックを除いて全員が10代だった。
多少子供っぽいところはあるものの、男達はみんな年相応に性欲を持っている。
半身がサイボーグのフランキー、骨だけのブルック、トナカイのチョッパーは知らないが、その他はそこら辺でバレないように自慰をしていた。
だがゾロだけは“剣士にあるまじき行為”と考えて、自ら快感を求めることはなかった。
そのせいもあったのだろう。
ルフィはとにかく奔放なのでヒヤヒヤすることもあったが、誰かが“それっぽい事”をしている時は、万が一ナミとロビンがその部屋に入らないよう、それとなく立ち回るのがゾロの役目だった。
「そのおれが、こんな場所でマスかいているんだからザマねェな・・・」
誰もいない森の中、卑猥な水音がし始める。
人の目はないが、ヒューマンドリル達にはこの姿を見られたくないと思った。
ミホークやペローナの前でマネをされたらシャレにならない。
昼過ぎだというのに、相も変わらず暗い空。
どんよりと湿った空気に、精液の匂いが溶け込んでいく。
「・・・ッ・・・」
久しぶりの快感は、驚くほど早い絶頂をゾロにもたらした。