第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「ちくしょう・・・!!」
ゾロは悪態をついて城に背を向けた。
自分があの二人の間に割って入るにはまだ弱いことを、認識せざるを得ない。
お前はいったい何者なんだ、クレイオ。
何故、平然とミホークに寄り添うことができる?
ミホークを見つめる、彼女の瞳。
それはまさに“鷹の目”で、ゾロを捉えて離さない。
もしあの瞳が自分に向けられたら・・・?
もし自分の肩に寄り添ってきたら・・・?
“コンパニオンプランツのように、自分を強くしてくれる出会いがある。貴方との出会いがそれならば、私は神に感謝したい”
お前はいったい、なんのためにシッケアール王国へ来た?
忌々しいほどに、胸がザワついている。
いや、これは高鳴りだ。
おれは興奮しているのか───
城を離れたゾロは、森に入るや目の前の大木を一刀両断にした。
ビリビリと柄を持つ手の平にその衝撃が伝わってきたが、まだその興奮は収まりそうもない。
何か・・・もっとデカいものを斬らないと鎮まらないか。
「不殺生戒・・・無益な殺生は剣を鈍らせる・・・」
ミホークを見つめる、クレイオの瞳。
あれが自分に向けられたら、果たして平常心を保っていられるだろうか。
ゾロは刀を鞘にしまうと、大岩を背にあぐらを掻いた。
収まらない興奮は、すでにゾロの身体の一部分に変化を与えている。
思えば、クレイオを初めて見た時から感じていた、恐怖と高揚。
それが一気に大きな波となって、ゾロの煩悩を煽り立てる。
食欲、財欲、名誉欲、睡眠欲、色欲───
人間が持つ、煩悩五欲。
もちろん、自分にも例外なくそれはある。
だが剣の道を歩む者として、享楽することを戒めてきた。
そのはずだったのに・・・