第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
クレイオがシッケアール王国に来てから1週間。
食事の支度や洗濯、掃除はすっかりクレイオの仕事となっていた。
「当たり前だ、雑用は新入りの仕事だからな」
クレイオが居候となったのを誰よりも歓迎したのは、嬉々としてそう言っていたペローナかもしれない。
これまで必然的にやらされていた家事を、ようやく押し付けられる相手が現れたのだから。
ただ、完全な夜型人間で起床は昼頃というペローナとは違い、クレイオは朝飯からしっかりと作ってくれるので、ゾロとしても歓迎だった。
「おはよう、ゾロ」
朝7時半になると厨房の方から漂ってくる、美味そうな匂い。
あくびをしながらダイニングルームに入ってきたゾロに、クレイオは焼きたてのパンをオーブンから取り出しながら微笑んだ。
「おう」
テーブルには、目玉焼きとベーコン、そしてコールスローサラダが乗っている。
豪勢ではないが、クレイオが普段からかなり料理をしていたことが伺える出来栄えだ。
「目玉焼き、卵5個分だったよね」
「おう」
ここではずっと朝は生卵を飲むだけだったが、やはりまともな食事はいいもの。
ゾロはパンッと両手を合わせてから、朝食をかきこんだ。
「・・・・・・・・・」
ふとクレイオの方を見ると、今度はコーヒーを淹れ始めている。
それがゾロのためでも、ペローナのためでもないことは明白で。
「・・・ミホークはもう起きてんのか?」
ゾロが何気なく聞くとクレイオは手を止め、一呼吸おいてからこちらを振り返った。
「ええ、起きている」
何てことのないことのように答えた彼女を見た瞬間、胸がザワリとした。
「・・・そうか。じゃあ、今日こそは稽古をつけてもらわねェとな」
クレイオがここに来た日から、ミホークは一度も剣を握ろうとしない。
そのこともゾロの心がザワついている理由だった。