第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「カモミールという花を一緒に植えた方がいい。ここの土は悪くないけれど、害虫が多いから」
「花を野菜と一緒に植えるのか?」
「そう。コンパニオンプランツって言葉を聞いたことない?」
「・・・?」
そりゃなんだ、何かの技名か?
ゾロが眉間にシワを寄せていると、クレイオはその場に屈みこんで雑草を抜き始めた。
その手つきがとても慣れていて、みるみるうちに雑草の山が出来上がっていく。
「カモミールは防虫予防だけじゃなく、そばに生えている植物も強くしてくれる」
「・・・・・・・・・」
「別々の植物が、ともに生きることで互いの力を引き出すのよ」
土で手を汚しながら植物を語るクレイオは、とても嬉しそうで誇らしげ。
昨日見せた威圧感が今は無く、シャンクスの弟子という事が無ければただの女のようだ。
そして何故か、そんな彼女から目を逸らすことができない。
「なら・・・あるかどうか分からねェが、今度探してみるか? そのカモミールとやらを」
「ええ、その方がいい。薬草にもなるから、傷だらけの貴方には必要かもね」
昨晩、ペローナに巻いてもらった包帯を見てクスリと笑っている。
その笑顔に胸がざわつき、ゾロにしては珍しく居心地の悪さを覚えた。
「ところで、お前はこんな朝っぱらから何してる?」
「朝のお祈りをしていたのよ」
クレイオは立ち上がると、ワンピースの裾についた泥を払った。
「朝6時から1時間、神に祈るのが日課なの」
「そりゃご苦労なことだ。おれは神なんかに祈ったことがねェから、よく分からねぇがな」
だから、その行為の意味も、価値も分からない。
そもそも、どのような苦難、困難が待ち受けていようと、それに立ち向かうのは自分自身。
神がどうこうしてくれるわけじゃないだろう。
するとクレイオは胸元のロザリオに触れ、笑みを浮かべながらゾロを見つめた。