第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
シッケアール王国の朝はとにかく暗い。
快晴とはいったいどんな空だったか忘れるほど、毎日のように太陽の光を遮る厚雲。
朝7時、ゾロは両肩に大きな樽を担ぎ裏庭にいた。
目の前に広がるのは、キャベツやピーマンなどの野菜畑。
それに水をやるのがゾロの仕事だった。
「ったく・・・なんでおれが野菜の世話なんかしなきゃなんねェんだ」
ここは森に近いおかげで、猛獣の肉には困らない。
サンジが口酸っぱく言っているように緑のものを食えというなら、その辺に生えている草でも食べていればいいだろう。
そんなゾロの考えはペローナに罵声付きで一蹴され、ミホークはといえば、意外にも畑仕事が嫌いではないようだ。
時々、フラリと航海に出て謎の種を持ち帰ってきては、いそいそと畑に植えている。
三人以外に人間はいない国だ、自給自足は仕方がない。
だが問題は、世話をするのがもっぱらヒューマンドリルとゾロだということだ。
「サルもサルだ、人間の仕事だと分かったら嬉々としてマネしやがる。おれの立場がねェじゃねェか」
乱暴にジャバジャバと水を撒きながら悪態をつく。
とはいえ、野菜を枯らそうものならペローナにドヤされるし、一応は居候である事を自覚しているので、水やりをサボるわけにはいかなかった。
億劫な朝の仕事のせいで最悪の気分だったが、それも一瞬にして変わる。
「おはよう、ゾロ」
ペローナとは違う女の声。
振り返ると、そこにはクレイオが立っていた。
「おう」
ゾロは軽く返事をしてから、三分の一ほど水が残った樽を大きく振る。
放物線を描きながら土に潤いを与えていく水を見て、クレイオがニコリと笑った。
そして、何を思ったのか。
「カモミール」
「あ?」
突然聞きなれない言葉を言われ、ソロは訝し気に首を傾げた。
クレイオはもう一度微笑むと、足元のキャベツ畑を指す。