第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「───シャンクスか?」
「そう。私が一人で森に入ると言って聞かないから、ヒューマンドリルや猛獣に襲われないよう、覇気で守っていてくれただけ」
「そういうことか・・・」
それなら合点がいく。
あの時、覇気はこの女から出ているというよりは、この女を包んでいるようだった。
距離が離れた人間を守るためのものだったと思えば、コントロールできずに誰彼構わず覇気をぶつけてしまっても仕方がないだろう。
「だとすると、四皇というのはとんでもねェ化け物だな」
今思い出しても鳥肌が立つほどの覇気。
攻撃の意志を持ってぶつけられたら、今の自分に耐えられるかどうか分からない。
「それで・・・そのシャンクスが師匠ということは分かったが、なんでお前はここに残ってんだ。シャンクスはもう出てったんだろ?」
「私はしばらくここでお世話になるつもりだから」
「ほう」
ミホークのことだ、ゾロとペローナの他にも居候がもう一人増えても気にしないだろう。
しかし、シャンクスが師匠ということは、この女も海賊なのか?
とてもそうは見えないが・・・
「どうでもいいが、お前がおれの名前を知っていて、おれがお前の名前を知らないのはどうもフェアじゃねェ」
「・・・・・・・・・・・・」
「名を名乗れ、シャンクスの弟子」
ピリッと二人の間に緊張が走る。
ゾロが無意識に垂れ流す覇気に、女の気迫が共鳴しているようだ。
この感覚・・・もしかしたら彼女も剣士なのかもしれない。
漠然とした考えがゾロの脳裏をよぎる。
すると女はかろうじて二人の間に2段残っていた階段を上り、ゾロのすぐ目の前に立った。
そして、昼間に見せた氷の薔薇のように冷たく、美しい笑みを浮かべる。
「私の名はクレイオ」
ドクンと心臓が鳴る。
まるで名刀の切っ先が喉元に突き付けられているかのようだ。
「よろしく・・・ジュラキュール・ミホークの弟子──ロロノア・ゾロ」
世界に名高い、二人の大海賊。
それぞれの弟子が出会った、その運命こそが・・・
神の意志だったのかもしれない───