第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「よう、また会ったな」
女は扉の前で立ち止まると、階段の途中にいるゾロの方へ顔を上げた。
その表情を確認するには少々光が足りないが、口元に笑みを浮かべているように見える。
「これがお前の言う、“神の思し召し”とやらか?」
すると女はゆっくりと階段に歩み寄り、一段一段登り始めた。
「さァ・・・そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
貴方が今、ここにいる事は神の意志なのか、それとも貴方自身の意志なのか。
それを知る術はない。
「こんな夜更けに、外に何か用だったのか?」
「シャンクスを見送っていたの。今夜中に出航するって言うから」
女が一段上がるごとに、二人の距離が縮まっていく。
そして、僅か2段を残して彼女の足が止まった。
「今日はとても楽しかったのね。あんなに酔っぱらったシャンクスを見たのは初めてよ」
「・・・・・・・・・・・・」
昼間も思ったが、彼女は一見して非力のように見える。
だが、この威圧感はなんだ。
対峙しているだけで汗が出てきそうなほど、恐怖に近い感情を覚える。
その瞳がそうさせているのだろうか。
「シャンクスが貴方によろしくと言っていたわ、ロロノア・ゾロ」
まさか先に彼女の口から自分の名が出てくるとは思わず、ゾロは一歩引いた。
そのような反応は想定内だったのか。
女は静かに微笑んでいる。
「お前はいったい何者だ?」
「私? 見た目通りだと思うけれど」
ランプの灯りを受けて光る胸元のロザリオ。
“見た目”というならば、どこかの島で見かけた修道女のようだ。
だが、神に仕える者にしては、どことなく陰を感じさせる。
「さっきの覇気・・・ありゃ覇王色だろ」
「あぁ・・・」
普通の人間なら立っていられないほどの覇気。
それに耐えていたゾロを思い出したのか、女はクスクスと笑った。
「あれは、私の覇気じゃない」
そもそも私に覇王色の覇気などない、と言って肩をすくめる。
「お前の覇気ではない? じゃあ・・・いったい誰の・・・?」
「とても過保護な、私の“師匠”の覇気」
「・・・師匠?」
今日、この国にいた人間で、覇王色の覇気が使える者といったら・・・