第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「その女がどうかしたのか?」
「いや、なんでもねェ」
ただ森で会っただけだ。
互いに名乗りすらしなかった。
言葉を濁すゾロだったが、女が来た事はペローナにとってはどうでもいい事らしい。
変な奴、と首を傾げるだけだった。
気づけば、広間の大時計は10時半を指そうとしている。
ペローナはゾロに包帯を巻き終えて満足したのか、大あくびをしながら自分の部屋に戻っていった。
まだ眠気のないゾロが、何気なく窓から黒い空を見上げたと同時に、四半刻に一度鐘を鳴らす大時計が時を告げる。
ゴーン・・・
その音はもう聞きなれたものだ。
だが、一度だけ鳴ったその音に、いつもと違う音が微かに混じっていたことに気づき、ゾロの眉がピクリと動いた。
今、微かに玄関の扉が開く音がした。
こんな夜更けに・・・?
ミホークが気まぐれで外出していたのだろうか。
いや・・・違う。
ゾロは広間を出て、玄関へ続く階段を下りた。
一切の覇気は感じられないが、確かに“気配”を感じる。
それはペローナはもちろん、ミホークでもシャンクスのものでもない。
カツンカツンと、むき出しの石壁に響くゾロの足音。
それに向こうも気づいたのだろうか。
キィーっと扉の閉じる音が、僅かにそのスピードを変える。
「・・・・・・・・・」
ちょうど玄関を見下ろせる所までくると、ゾロの足がそこで止まった。
城のところどころに取り付けられているランプの灯りだけでは、満足に空間の全てを照らすことができないが、剣士の目にはそれで充分。
───そこに、女がいる。
それはまさしく確信だった。
ゾロは瞬きを一つしてから、口を開いた。