第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
麦わらの一味が離散して1年。
ゾロは否が応でも思い出してしまうことがある。
「・・・ッテ・・・しみるな」
風呂に浸かると、蓄積された傷口が悲鳴を上げた。
いつもヒューマンドリルや猛獣を相手にしているせいで生傷が絶えないし、ミホークに手合わせをしてもらうと手加減なしで斬りつけてくるから、深手も相当ある。
だが、傷を負う事自体は慣れっこだ。
ルフィ達と一緒にいた時の方がよく死にかけていた。
「ふー・・・」
湯船の中から右腕を出して、前腕の大きな裂傷を見つめる。
これがいつ、どのようにして負ったものかはもう思い出せなかった。
それほど前のものなのに、まだ触ると痛いということは癒えていない証拠。
「チョッパーの薬をつけりゃ、3日で治っていたんだがな・・・」
別に薬などなくたって完治させる自信はある。
でもこういう時、思ってしまうのだ。
なるべく動作が制限されないように巻いてくれるチョッパーの包帯。
疲労回復、滋養強壮まで考えられたサンジの御馳走。
きっとサニー号に乗っていたら、こんな怪我などとっくに完治していただろう。
「仕方ねェ。無いものは無ェんだ」
柄にもなく感傷的になっている自分を戒めるため、バシャバシャと湯で顔を洗ってから、勢いよく湯船から上がる。
ルフィ達がいれば“みんなで入ろうぜ!”と誰かが言って、男全員で飛び込んでいただろう広さの大風呂。
ゾロ一人分の湯だけが流れる音が、ガランとした大浴場に響いていた。