第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
シャンクスの言葉に納得したのか、しないのか。
ミホークは黙ったまま、喉の奥にワインを流し込む。
そして、窓の向こうの夜空に飛ぶコウモリに目を向け、小さく溜息を吐いた。
「それで・・・貴様はいつまで居るつもりなのだ?」
「あァ、今夜中に発つよ。岬に仲間を待たせてる」
「相変わらず慌ただしい男だ」
「この島の湿気が苦手なんだ、長く居たくはない。おれはもっと明るい場所が好きなんでね」
つくづくお前とは相容れないな。
互いにそう言って、顔をしかめるミホークに、笑うシャンクス。
かつて、顔を合わせるたびに決闘をしていた頃を思えば、まさかこのような時が来るとは思わなかった。
それはシャンクスが左腕を失ったおかげか、それとも・・・
「おれが彼女を弟子にしたのは・・・お前が二度も大切な人間を失わねェようにだ。勝手なことをして悪かった」
ミホーク。
おれはお前を友人だと思っている。
頂上戦争では、おれと戦うことは協定外だと言って自ら退いたそうじゃねェか。
それを聞いた時は嬉しかったぜ。
「謝りついでに一つ頼んでもいいか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「彼女をしばらくお前に預ける! 気が向いたら、おれの代わりに稽古をつけてやってくれ」
「・・・お前はどこまでも勝手な男だな」
だが、ミホークは断ることをせず、シャンクスのグラスが空になっていることに気づくと、ボトルに残った最後の酒を注ぐ。
「まだ酒が何本か残ってるな! それじゃあ、全部飲み尽くすまで互いの弟子自慢といこうじゃねェか」
「・・・貴様、今夜中に発つのではなかったのか?」
「いいんだよ、細けェことは! ほら、飲むぞ!」
そして二人は、“赤髪海賊団”が出航するまでの僅かな時間を惜しむように盃を交わしていた。