第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
ゾロがシチューで空腹を満たしている頃。
この城の主の部屋では、二人の大海賊が酒を酌み交わしていた。
「それにしても驚いた。ルフィの仲間がお前の弟子になっていたとはな」
赤い髪を揺らし、上機嫌で笑うその男は四皇シャンクス。
かつてはミホークと剣の腕を競っていた仲だが、片腕を失った今では友人とも呼べるような関係となっていた。
「お望みならば、ロロノアを呼ぶか? 麦わらの話を聞きたいだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
ゾロが弟子だということを否定しないミホークに、シャンクスは目を細めながら首を横に振った。
「いいや、やめておくよ。まだ“その時”じゃない。向こうもそう考えているようだしな」
“いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな”
フーシャ村で出会った小さな子ども。
今や4億の賞金首だが、彼が目指すのはもっと“高み”だ。
シャンクスは小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座っているミホークのグラスに酒を注ぐと、窓の向こうに広がる暗い景色を見つめた。
「さっき、そうとは知らずにロロノア・ゾロを威嚇してしまったが、聞いていた以上に気骨のある若者のようだな」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前が気に入るのも納得がいく」
逆にミホークにとってはその言葉が納得できなかったのか、鷹の目は不愉快そうに眉をひそめた。
「気味の悪い言い方はよせ。あの男が勝手に居ついているだけだ」
「照れるな照れるな。偏屈者のお前でも弟子と認めるくらいだ、さすがルフィの仲間だな」
「ならばおれも言わせてもらおう。まさかお前のような能天気な男が、剣を持つべきではない者を弟子にするとは思わなかったぞ」
「・・・彼女のことか?」
シャンクスは、手土産として持ってきた赤ワインを喉に流し込んでから、友の顔を見て豪快に笑った。
「はっはっは、美人になっていてびっくりしたか? だが、剣を持つ姿は堂々たるものだぞ」
「・・・・・・・・・・・・」
「まるでお前のようにな」
ミホークの表情に大きな変化はない。
だが、グラスを持つその手に力が込められたのを、シャンクスは見逃さなかった。