第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「───客は女か?」
先ほど森で会った、あの覇気に包まれた女。
確かにこの城の方に向かって去っていった。
あれから5時間は経っているから、もうここに着いていてもおかしくない。
「女だけだったら、私だってここでお前なんかを待ってねェよ!!」
「違うのか? じゃあ、誰だ」
「聞いて驚くな・・・」
元・王下七武海のゲッコー・モリアの部下だったペローナは、同じ七武海であるミホークを世間の剣士達のように恐れたりはしない。
だが、あの“来客”に対してはそうはいかなかった。
あまりの恐ろしさに一人でいることが嫌で、ゾロの帰りをずっと待っていたくらいだ。
「バカなお前でもその名前くらいは聞いたことがあるだろう」
それは七武海を含めた世界中に何十万といる海賊の、最高峰に立つ4人にだけ与えられた称号。
「四皇の一人、“赤髪”のシャンクスだ!」
その名を聞いたと同時に、城の空気が変わった。
ミホークの部屋がある方角から、全てを覆いつくす緞帳のような覇気が漂ってくる。
ペローナがヒィ!っと叫び声をあげて、ゾロの後ろに隠れた。
「なんて覇気だ・・・おれの存在に気が付いたのか?」
身体が重い・・・
ロロノア・ゾロという人間を確認しているかのように、ビリビリとした覇気が身体に纏わりついてくる。
半端な人間ならきっと、口から泡を吹いて気を失っていただろう。
だが、嫌な感じはしない・・・
おそらく今、この覇気の主に敵意がない証拠だ。
「さすがはルフィの恩人であり、憧れの海賊というわけか・・・」
剣士としても名高いシャンクス。
ゾロはニヤリと笑うと、腰に差した刀に手をやった。
「ぜひとも会って手合わせしてみてェ」
だが、柄を強く握るだけで刀を抜きはしない。
そして覇気が流れてくる方に背を向けた。
「けど、ルフィに抜け駆けしてその顔を拝むわけにはいかねェな」
ルフィがいつか、あんたにちゃんと麦わら帽子を返せるように。
おれ達がもっともっと強くならないと、船長を海賊王にすることができない。
そのために今、ウソップ、ナミ、アホコック、チョッパー、ロビン、フランキー、ブルックも修行しているはずなんだ。